【センシング用】視野角120度の広角赤外線カメラを作る!【格安】

【センシング用】視野角120度の広角赤外線カメラを作る!【格安】

私は仕事やプライベートでメディアインスタレーション作品を開発していますが、インタラクティブな作品を作る際に一番頻繁に必要になる情報が「人の位置や動き」などの情報です。
cv

そんな情報を取得する際によく使われるセンサとしてはKinectXtionといった深度カメラがありますが、実はこの手の深度カメラは4m程度の距離までしか取得できなかったりするので、多人数同時体験型のインスタレーション用途には少し使い難かったりします。
Kinect
さらにはKinect for WindowsはMacで使えないし、XtionはOpenNIの公開終了に伴って販売終了みたいだし…。
他には赤外線カメラがよく使われますが、1番ネックとなるのは、モーションキャプチャー等で使われている様なガチな赤外線カメラを購入しようと思うと恐ろしい金額になってしまう事です。

参考:OptiTrack

そこでお手頃価格のWebカメラを使って視野角120度の赤外線カメラを作る方法をご紹介します。
この方法なら5000円未満で赤外線カメラを作ることが可能です。

■必要材料

1.バッファロー BSW20KM11BK 価格.com最低価格:¥3100

※2015/04/14 追記 モデルチェンジで赤外線フィルターが外しにくくなったようです・・・ご注意下さい!

00_webcam

視野角120度の広角Webカメラ。そしてこの価格でフルHD対応なのがかなり凄いです。
そしてなんといってもこのWebカメラの使いやすい所は「マニュアルフォーカス」だという点です。一見マニュアルフォーカスは安物のイメージがありますが、センシング等の画像処理に使う際にはその都度フォーカスが勝手に変わってしまうオートフォーカス機能は邪魔にしかなりません。
手動でフォーカスを固定できるので、体験者が遠く離れた位置になる作品でもピントを合わせる事もできて、正確なトラッキングが可能です。

2.光吸収・赤外線透過フィルター(IRフィルター) Amazon価格:¥1385

03_filter
※1つでOKです。

一眼レフカメラ等で使われる赤外線透過フィルターです。
表記のIR-○○(数字)が高くなればなるほど透過する赤外線の波長の範囲が狭くなり、一部の赤外線LEDの光も通さなくなってしまうこともあるので、数字は低めの物を使っておいたほうが無難です。
なぜこのフィルターが必要になるかというと、例えばインタラクティブなプロジェクションを行う場合、
人の動きには反応させたいけど、プロジェクターの映像には反応させたくない」という事があります。
このフィルターは可視光を全てカットして赤外線だけを通すので、カメラにはプロジェクターの映像は映らないのです!

そのため人の動きを取得しながら人の周りに映像を投影する場合には赤外線フィルターは必ず必要になってきます。
その代わり赤外線を照射する為の赤外線投光機が必要になるのですが、それの作り方も後ほどご紹介します。

■作り方

1.Webカメラのレンズを外す

01_webcam_open

このWebカメラはマニュアルフォーカスなのでレンズがネジ式になっています。
ネジを緩める方向に回し続けると外すことが出来ます。(最後が少し硬めなので思い切って回して下さい)

2.レンズに付いている「赤外線カットフィルター」を切除する

02_irfilter

実は普通のWebカメラには赤外線が写り込まないように「赤外線カットフィルター」が取り付けられています。
上の写真の赤く反射している部分がそのフィルター(ガラス製)です。
カッターなどで周りのプラスチックの出っ張りごと切除してしまいましょう。
その時、そのすぐ下に別のレンズがあるので傷つけてしまわないように注意して下さい。

余談ですが、最近のWebカメラは赤外線カットフィルターがレンズの奥まった所に埋め込まれてしまっていて剥がせない事が多かったり、PSEYEは赤外線カットフィルターがレンズと一体になっていて剥がすとフォーカスが合わなくなってしまったりしてとても使い難いので、このカメラは比較的剥がしやすい場所にありMaker的には良いWebカメラと言えますね!

02_irrens

切除したあとの写真がこちら。
赤外線カットフィルターはもう使わないので割れてしまっても問題ありません。

3.赤外線透過フィルターをレンズに取り付ける

04_tape

先ほど赤外線カットフィルターを外した部分に両面テープをぺたっと貼ります。

05_puton

今度は5mm程度にカットした赤外線透過フィルターをそこにぺたっと貼ります。

06_set

これを再び元のWebカメラに戻せば赤外線カメラの完成です\(^o^)/

06_fin

これで赤外線のみが映るカメラになったので、太陽光のある日中の屋外や、ライターの火なんかが綺麗に白黒映像で撮影出来ると思います。

【赤外線投光機】

赤外線カメラは完成しましたが、実はこれだけでは不十分なのです。
暗くした部屋の中には基本的に赤外線がないので、暗闇でユーザーのトラッキングを行うには赤外線の投光機が必要になってきます。
以前は私も自分で赤外線LEDを100個〜200個ハンダ付けをして赤外線LEDアレイを作ったりもしたのですが、なにしろ作るのに時間がかかってめっちゃしんどいし、何よりLEDの照射角が狭く(30度程度)トラッキングできる範囲も狭くなってしまうためとても使い難いのです!
そこでこちらも便利で簡単で安価に作る方法をRhizomatiksの比嘉さんから教えていただいたのでご紹介します。(比嘉さんありがとうございます!)

■必要機材

1.パーライト

07_parlight

舞台用の照明です。センシング用なので光が広角に広がるショートタイプが適しています。
私は以下のものを購入しました。(¥2800)
STAGE EVOLUTION ( ステージエボリューション ) / PAR56SBG

2.パーライトランプ

上記のパーライト用のランプです。
こちらもセンシング用なので出来る限り広角のランプを選択したほうが良いです。
また、ソケット形状が数種類あるのでパーライトと同じ形状の物を選択して下さい。
私は以下のものを購入しました。(¥2380)
SYLVANIA ( シルバニア ) / PAR56/300W

3.カラージェル

08_colorfilm

パーライト用のカラーフィルムです。こちらもパーライトのサイズと合わせる必要があります。
RGBYの4色のフィルムがセットになっている物を購入しました。(750円)
STAGE EVOLUTION ( ステージエボリューション ) / CG9

■作り方

作り方は簡単!
パーライトにランプを取り付けて、カラーフィルムのRGBの3枚を重ねてセットしてしまえば完成です!
これで可視光だけカットされて赤外光が照射される強力なライトになります。

09_irlight

コンセントに繋ぐとランプが点いて、フィルムの所が少し赤っぽく光ってるのがわかると思います。
今回作成した赤外線カメラとこの赤外線投光機を同時に使うと、真っ暗な部屋の中だろうがバッチリ映像が撮影できちゃいます!

※照明屋様からフィルムを複数枚重ねて長期間投光すると発熱して最悪発火(難燃ではありますが)する可能性があるとの情報を頂いたので、仕様の際はご注意下さい&自己責任でよろしくお願いします。

irimg

真っ暗な部屋で赤外線投光機を点けて撮影した画像ですが、ばっちり120度広角でフルHD画質で赤外線画像が撮影出来ていますね。
後はプログラム側でopenCV等を使って動体検知をすれば簡単に人の動きに合わせたインタラクティブなメディアインスタレーション作品を作ることが出来ます。

最近では「七色小道」をこの方法を利用してopenFrameworksで制作しました。

ということで、いかがでしたでしょうか!
何十万円もする赤外線カメラや赤外線投光機を買い揃える必要はなく、お手頃価格で自作出来る事をお分かり頂けたかと思います。
このくらいの値段であれば個人での作品制作も積極的に行えると思いますので、皆さんも自作した赤外線カメラ&投光機で面白い作品を沢山作っていきましょう!

最後までご覧頂きありがとうございました。

※追記
現在では防犯カメラ用のLEDタイプ投光器も照射角の広いものが安価で出てきていますのでそちらを使用するようになりました。
発熱や消費電力の観点でもLEDタイプの投光器がオススメです。
(光量センサー付きなので常時点灯させるにはセンサーを塞ぐ必要があります)
https://amzn.to/3BBwxD1

Comments ( 21 )

  1. Bitter
    こんにちは。とても驚きました。 Kinectの場合は確かに4mほどが限界の範囲ですが、 こちらに紹介されたものの場合は、どれくらいまで検知できるのでしょうか?
    • Teruaki Tsubokura
      >Bitterさん こんにちは。コメントありがとうございます。 Kinectの様に深度情報が取得できるわけでは無いですが、赤外線カメラの場合は検知距離は【赤外線投光機の光が届く限り】です。 今回の機材の場合は個人的な感覚ですが、20~30mくらいまでなら問題なく使えると思います。もちろん投光機を増やせばもっと行けると思いますが。 あとは自分でopenCVで動体検知や背景差分の処理を書いてさえしまえば、Kinectのようにユーザートラッキング7人までのような人数制限もなく、実質無制限で複数ユーザーのトラッキングが行えるのでオススメです。
      • Bitter
        返信有難うございます。 とても感動してしまいました..!  何かとKinectでどうにかしようとしていた身でしたので、根本的な部分を知ることができて良かったです。
  2. 【センシング用】視野角120度の広角赤外線カメラを作る!【格安】 | TsubokuLab – ツボクラボ - | おされアンテナ
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  3. 照明屋
    カラージェル複数枚重ねて長時間投光すると発熱→最悪発火(難燃ではありますが)しますからそこはご注意ください。
    • Teruaki Tsubokura
      >照明屋さん 貴重な情報ありがとうございます。重ねると間の空気が温められてしまうということですね。 時間でON/OFFする等、少し工夫が必要ですね。 ありがとうございました。
  4. Shigekazu Ishihara
    わっ,これはありがたい情報がてんこもりです! わたくし,人間工学的なIRの測定をいろいろやっておりますが, カメラ,フィルター,光源等,細かいところは妥協の連続でしたが, おかげでワングレード上の測定ができそうです!!
    • Teruaki Tsubokura
      >Shigekazu Ishiharaさん コメントありがとうございます。 IRの測定ともなるとpointgrey社とかのちゃんとしたIRカメラが使われてると思っていたのですが、案外こんなハンドメイドIRカメラでもそれらに肩を並べることができるんですね。 お役に立てて良かったです。
  5. 光輝
    おぉ、これは。 赤外線投光機を同じくちまちまLED付け替え 自作してた身としてはありがたい情報です。 今買おうか検討してたものも6000円ぐらいだったので。
  6. Peta
    以前からこれくらいの明るさの赤外線ライトがほしいと思っていました。 この知識を有効に使わせていただきます。 フィルムを複数枚重ね、長期間投光すると発火する これについては電球からの発熱が原因でしょうか? でしたら、 透明のプラ製カバーを2重構造にした、その間にフィルタを挟み、 電球との間に距離を空ければ、熱の問題は少しは和らぐかもしれませんね。
    • Teruaki Tsubokura
      >Petaさん コメントありがとうございます。 発火する可能性があるのは電球の発熱が原因なのですが、確かに空間をひろくあけて風通しをよくする、逆に3枚のカラージェルを密接に隙間なくくっつけて空気を入らなくする必要がある気がしています。 ただ、既にこの仕組で全国6箇所の美術館で毎日8時間以上、2ヶ月間ほど連続稼働させていましたが、特にカラージェルが溶ける等の問題も起こらなかったので、おそらく大丈夫かと思ってます。
  7. 美鶴
    確かに安くできますね、最初ハロゲンが別売りとは知らずパーライトだけきましたw また、パーライトがジェルを溶かして発火すると怖いので、 パーライトとカラージェルの間にポリカーボネート板の断熱タイプを挟んで僅かに 空間を作る事にしました。
    • Teruaki Tsubokura
      >美鶴さん そうなんですよね、パーライトはガワだけですw 発熱はたしかに怖いんですが、既にこの仕組で全国6箇所の美術館で毎日8時間以上、2ヶ月間ほど連続稼働させてひとつも問題が起こらなかったので、大丈夫かなと思っています。 ただ風通しや空調の効いている場所での使用だったので、暑い場所ではちょっと不安ですね。
  8. abue
    とても参考になりました! 実際おすすめしたカメラを購入し、作成してみましたが、運が悪かったか、 赤外線カットフィルターを固定する部分が一体式で、赤外線カットフィルターが 取れにくくなりました。 そこでしかたなく、そのまま力技で赤外線カットフィルターをそのまま割りました。。。 それでもなんとかレンズを傷つけず(たぶん)で完成しました!
    • Teruaki Tsubokura
      >abueさん コメントありがとうございます。 こちらでもカメラの型が変わってるのを確認しましたが、最近またAmazonで買ったらフィルターが外しやすい方が届きました。 運が良ければ外しやすい方が手に入る感じですかね…汗
  9. riku
    いつも拝見させていただいております。2つ質問させてください。真下にプロジェクターを投影していますが、どのように投影しているのでしょうか。こちらのように(http://teruaki-tsubokura.com/works.php?ar_id=2)鏡で反射させているのでしょうか。それともプロジェクターを傾けているのでしょうか。もう一つの質問は赤外線カットフィルター付きのwebカメラはどのような位置から撮影しているのでしょうか。
    • Teruaki Tsubokura
      >rikuさん コメントありがとうございます。 以前は個人で展示する際は仰る通り鏡を使って反射させて投影していたのですが、最近の展示では施工業者が入ることが多くなったので、板にプロジェクターを固定して天井から吊り下げてもらっています。 こんな感じ。 https://dl.dropboxusercontent.com/u/15228465/projector_01.jpg 左からプロジェクター、赤外線カメラ、スピーカー、赤外線投光機です。 https://dl.dropboxusercontent.com/u/15228465/projector_02.jpg プロジェクターは90度傾けているため、念のためファンを外付けして熱対策していますが、今のところ問題が起きたことはありません。 参考になれば嬉しいです。
      • riku
        非常に参考になりました!ありがとうございます!実は、坪倉さんの作品を面白いと感じ、誠に勝手ながら技術向上のためにコピーしています。メディアアートの分野も始めたばかりの未熟者ですが、坪倉さんの作品を通して勉強させて頂きたいと思っています。丁寧にコメントをして頂きありがとうございます!
  10. sakura
    こんにちは。WEBカメラの改良と投光器のアイデアに驚きました!他にもこちらのサイトでは知りたい情報が掲載されており勉強させていただいております。ありがとうございます。 私はメディアアート初心者なのですが、低予算でインタラクティブアートを実施したく調査していたところ、こちらへ辿り着きました。今現在、制作したいものが「七色小道」と共通点が多く、誠に勝手ながら「七色小道」をお手本にさせていただきたく考えております。 2点質問させてください。赤外線カメラのセンシングはopenFrameworks上でopenCVライブラリを使用しているのでしょうか。また、動体検出とグラフィックの連動はどのようになされているのでしょうか。
  11. Nickname ( required )
    こんにちは。サイトを見させていただいて同じカメラを作らせていただきました。 しかし、大事なプログラミングの方がわかっておらず、どのように反応させたかソースコードを見せていただくと嬉しいです。よろしくお願いします
    • Teruaki Tsubokura
      ブログ全然見てなくて返信に時間が空いてしまいましたが、僕の場合はopenFrameworks(c++)でopenCVを利用して動体検知の仕組みを作りました。 https://tech.pfq.jp/blog/977/ 大体このブログの方と同じような方法で作ってるので参考にしてみてください。

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